モテ女のリスクヘッジ

ひどい失恋の経験がなくても、プライドや心が傷つけられるのが恐い臆病な小心者や、失恋の痛手を回避する方策を練る慎重派は、同様にこのリスクへッジを考えることだろう。(もちろん、そう願ったところで、そこそこモテる女性でなければ実行はできない。くどいようだが、念のため。)

バブルの頃に、「本命君」、「キープ君」、「ミツグ君」、「アッシー君」、「メッシー君」などの言葉が、モテる女性のあいたで使われているようにマスコミは報じた。いかにも派手に遊びまくる女性が、目的別に複数の男性を利用する実態として、当時はかなり話題にされた。

しかしバブル的にモテていた女性は、いつかそのバブルが崩壊するかもしれないことを予知し、「本命君」以外に予備軍をち’んと維持したのである。「キープ君」なんて、まさにそう。まさかのときのために。確保しておきたい男、というわけだ。

そのあとの「ミツグ君」以下の呼称も、まるで相手をバカにしたように聞こえるが、本当に嫌な男性からプレゼントされても嬉しくないはず。ましてやそんな男性と共に食事するのは苦痛だろうし、その車に乗るのも不愉快に決まっている。つまり、彼らと付き合う限り、女性たちは彼らにある程度の好感を抱いていると考えて間違いないのだ。

このように相手によって付き合い方や、親密度に違いがあっても、女性が三人以上の男性と同時並行で交際することについては、比較的最近まで話題にされなかったのではあるまいか。

まあ「マドンナ」や「女王」のように奉られた女性のまわりに男性が集うという構図は、たとえば菊池寛著『真珠夫人』(1920-21)などの物語にも見られはする。

けれども、そのようなコミュニティやサロンがわが国においてあまねく成立していたわけではない。

しかしここで取り上げる交際形態はあくまでその瞬間は一対一だけれど、次の瞬間に相手が変わる、かもしれないのだ。しかもこれらの付き合いが、単なる友人関係ではなく、そこに多少なりとも恋愛感情が混じると、「複数恋愛」なる言葉で説明されることがある。

あえて「三角関係」と言われないのは、「二股」をかけているどころではなく、つまり「両数」ではなく三以上の「複数」の相手がいるためだろう。